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大阪地方裁判所 昭和47年(わ)588号 判決

本籍

大阪市西成区潮路通二丁目三番地

住居

堺市上野芝向ヶ丘町五丁一、四一二番

磨ナット製造業

小川統平

昭和四年一二月二〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官糟谷道彦、弁護人安藤純次各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年および罰金九〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、和歌山県橋本市隅田町真土三九番地において、小川磨ナット製作所の商号で磨ナット製造業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、

第一、昭和四三年分の所得金額が二七、二八九、二〇四円で、これに対する所得税額が一三、四九八、七〇〇円であるのにかかわらず、売上科目の金額を過少にし、仕入科目の金額を過大にしたほか各科目の金額を増減した決算書類を作成する行為により、右所得金額中二〇、七一〇、四九一円を秘匿したうえ、昭和四四年三月一二日大阪市西成区千本通所在西成税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が六、五七八、七一三円で、これに対する所得税額が一、九九六、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一一、五〇一、九〇〇円を免れ、

第二、昭和四四年分の所得金額が三二、四七二、二〇一円で、これに対する所得税額が一六、五二一、九〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上架空の仕入を計上し、かつ売上科目の金額を過少にしたほか各科目の金額を増減した決算書類を作成する行為により、右所得金額中二五、五五七、二四二円を秘匿したうえ、昭和四五年三月一四日、前記西成税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が六、九一四、九五九円で、これに対する所得税額が二、〇二五、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一四、四九六、三〇〇円を免れ、

第三、昭和四五年分の所得金額が五四、四八三、四九四円で、これに対する所得税額が三〇、二一六、七〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上売上の一部を除外し、架空の仕入を計上し、かつ各科目の金額を増減した決算書類を作成する行為により、右所得金額中四六、二三九、一四二円を秘匿したうえ、昭和四六年三月一二日前記西成税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が八、二四四、三五二円で、これに対する所得税額が二、三六三、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税二七、八五三、五〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

注、47.1.10は昭和四七年一月一〇日付の、(30)は検察官請求証拠目録の番地30のものの意味である。

判示全事実につき

一、被告人の検察官に対する供述調書

判示第一ないし第三の各事実につき、

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書四通(46.9.14、47.1.21、47.1.24、47.2.1)

一、被告人作成の供述書三通および確認書一七通(46.11.4(10)46.12.21、46.12.23三通、47.1.17二通、47.1.18、47.1.19、47.1.24(19)、(20)、(21)、47.1.26(28)、47.2.2、47.2.3(29)、(30)、(31))

一、収税官吏作成の小川末明に対する質問てん末書五通(47.1.20、47.1.21、47.1.24、47.1.26、47.2.1)および現金預金有価証券等現在高検査てん末書

一、次の者の作成した各照会文書に対する回答書

和歌山県社会保険事務所長、玉出社会保険事務所長、和歌山県経済部失業保険課、西成税務署、堺市役所徴税課長、大阪府西成府税務事務所長(46.12.21)、大阪市西成区長、橋本市役所固定資産税係、伊都県事務所長、

一、次の者の作成した各確認書

永和信用金庫玉出支店長(四通)、三和銀行玉出支店長、住友銀行粉河支店長、同銀行港支店預金係副係長、南都銀行橋本支店長、富士信用金庫天下茶屋支店長、大和銀行金岡支店副長、

一、収税官吏作成の査察官調査書(四通)

一、押収してある銀行勘定帳三冊(昭和四七年押第七一六号の一五)、手形受払帳一冊(同押号の一七)、契約書一綴(同押号の三五)、売上元帳一級(同押号の三七)、家賃金領収之通二通(同押号の四五)、売上帳一冊(同押号の四八) 仕入帳一冊(同押号の四九)

判示第一の事実につき

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書(47.2.3)

一、被告人作成の確認書五通(47.1.24、(22)、47.1.26(24)、(27)、47.2.3(32)、47.2.4)

一、西成税務署長認証の昭和四三年分所得税確定申告書写

一、収税官吏作成の小川末明(47.2.3)および金光孝相に対する各質問てん末書

一、株式会社宮本モータース代表取締役作成の照会文書に対する回答書

一、押収してある不渡手形二通(昭和四七年押第七一六号の三)、昭和四三年度申告書控一綴(同押号の五)、申告書控雑書(同押号の六)、高田実関係書類一綴(同押号の七)、残高証明書一綴(同押号の八)、登記済権利証書一綴(同押号の一一)不動産売買契約証書一綴(同押号の一二)、所有権登記謄本一綴(同押号の一三)、売掛帳一綴(同押号の一八)、売上元帳一綴(同押号の一九)、仕入先元帳一綴(同押号の二〇)仕入帳一綴(同押号の二六)、租税公課保険料光熱費一綴(同押号の二七)、見積書綴一綴(同押号の二九)銀行帳一冊(同押号の三〇)、銀行勘定帳一冊(同押号の三一)、四三年分領収書綴一綴(同押号の三二)、四三年度請求書綴一綴(同押号の三三)、賃金台帳本社および営業所一綴(同押号の三四)、契約書一通(協和工業、同押号の三六)、得意先元帳一綴(同押号の三八)、仕入先元帳一綴(同押号の三九)、領収書二枚(同押号の四〇)、不動産関係書類一綴(同押号の四一)、領収書一綴(同押号の四二、不動産賃借契約証書一通(同押号の四四)、橋本土地購入関係書類一綴(同押号の四六)、売原簿一綴(同押号の四七)仕入帳二綴(同押号の五〇、五一)、売買契約書一通(同押号の五三)

判示第二の事実につき、

一、収税官吏作成の被告人に対する質問てん末書(47.2.3)

一、被告人作成の確認書七通(46.11.4(9)、47.1.24(22)、(23)、47.1.26(24)、(25)、47.2.3(32)、47.2.4)

一、西成税務署長認証の昭和四四年分所得税確定申告書写

一、収税官吏作成の小川末明(47.2.3)および木村志郎に対する各質問てん末書

一、押収してある不渡手形二通(昭和四七年押第七一六号の三)、昭和四三年度申告書控一綴(同押号の五)、申告書控雑書一綴(同押号の六)、高田実関係書類一綴(同押号の七)、仕入先元帳二冊(同押号の一六)、売掛帳一綴(同押号の一八)、売上元帳一綴(同押号の一九)、仕入先元帳二綴(同押号の二〇、二一)、昭和四五年分決算資料一綴(同押号の二二)、賃金台帳一綴(同押号の二三)、売上帳一綴(同押号の二五)仕入帳一綴(同押号の二六)、租税公課、保険料、水道光熱費二綴(同押号の二七、二八)、銀行勘定帳一一冊(同押号の三一)自動車関係書類一綴(同押号の四三)、仕入帳二綴(同押号の五一、五二)

判示第三の事実につき、

一、被告人作成の確認書二通(46.11.4(9)、47.1.26(25))

一、西成税務署長認証の昭和四五年分所得税確定申告書写

一、収税官吏作成の木村志郎に対する質問てん末書

一、大阪府西成府税務事務所長作成の照会文書に対する回答書(47.1.28)

一、押収してある買掛帳二綴(昭和四七年押各七一六号の一、二)、領収書綴一綴(同押号の四)、雑書類一綴(同押号の九)、不動産売買契約証書一通(同押号の一〇)、売上元帳一綴(同押号の一四)、仕入先元帳二冊(同押号の一六)、仕入先元帳一綴(同押号の二一)、昭和四五年分決算資料一綴(同押号の二二)、賃金台帳一綴(同押号の二四)、売上帳一綴(同押号の二五)、租税公課保険料水道光熱費一綴(同押号の二八)、仕入帳一綴(同押号の五二)、不動産売買契約書(裏)一枚(同押号の五四)、同(表)一枚(同押号の五五)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で、被告人を懲役一年および罰金九〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金一五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとしたうえ、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文によりこれを被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 堀内信明)

右は謄本である。

昭和四七年七月二〇日

大阪地方裁判所第一二刑事部四係

裁判官書記官 槌屋喜久夫

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